外国人社員の年末調整|扶養控除・海外送金・必要書類を会社向けに解説|Year-End Tax Adjustment Japan
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外国人社員の年末調整(Year-End Tax Adjustment Japan)は、日本人社員と同じ書類を配るだけでは終わらないことがあります。本人が「居住者」か「非居住者」か、国外に住む家族を扶養に入れるのか、海外送金の記録を提出できるのか。確認する順番を誤ると、年末の短い期間に人事担当者と社員の双方が慌てることになります。
一方で、「外国籍だから特別な年末調整になる」と決めつけるのも適切ではありません。税務上の扱いは国籍だけでなく、日本での住所や居住期間、家族の状況などによって判断されます。
この記事では、外国人社員を雇用する会社向けに、年末調整の対象者、必要書類、国外居住親族の扶養控除、海外送金資料、社内スケジュールを整理します。税務の個別判断は税務署または税理士に確認しつつ、会社で準備すべき実務の全体像をつかむためにお役立てください。
外国人社員の年末調整で最初に確認すること|Year-End Tax Adjustment Japan
国籍ではなく、税務上の居住区分を確認する
年末調整を考える出発点は、社員の国籍ではなく税務上の「居住者」「非居住者」の区分です。国税庁は、国内に住所がある人、または現在まで引き続き1年以上居所がある人を原則として居住者と説明しています。
来日したばかりの社員、海外出向から戻った社員、年の途中で帰国する社員は、同じ外国人社員でも状況が異なります。入社日、在留カードの住所、住民票、雇用契約期間、出入国の予定を早めに確認しましょう。ただし、これらの書類だけで税務上の区分を機械的に確定できるとは限りません。
年末調整の対象者かを整理する
一般に、会社へ扶養控除等申告書を提出し、年末まで勤務している給与所得者は年末調整の対象になります。ただし、給与収入額、年の途中の退職、災害減免、複数勤務先などの事情によって対象外となる場合があります。
また、医療費控除、寄附金控除、年末調整で処理できない住宅ローン控除の初年度などは、本人が確定申告を行う場面があります。「会社で全部処理できる」と案内せず、年末調整の範囲と確定申告の範囲を分けて説明することが大切です。
9月から翌年1月までの実務スケジュール
9月〜10月:対象者と国外扶養の有無を確認する
まず、当年に入社・退職・帰国予定の社員を一覧にします。外国人社員には、国外に住む配偶者や親族を扶養控除の対象として申告する予定があるかを早めに確認してください。
国外書類は取得に時間がかかります。現地の行政機関が発行する証明書、家族関係を示す書類、金融機関の送金記録などは、数日でそろわないことも珍しくありません。日本語訳も必要になるため、11月に初めて案内すると締切に間に合わない可能性があります。
10月〜11月:申告書と証明書を回収する
社内締切を決め、申告書の記載例を配布します。日本語だけでは理解が難しい社員には、やさしい日本語や英語による補足資料を用意すると、記入漏れを減らしやすくなります。ただし、翻訳版は説明用です。税務署へ提出・保存する正式書類との対応関係が分かるようにしてください。
回収時には、氏名、生年月日、住所、個人番号、配偶者・扶養親族の情報、保険料控除証明書、前職の源泉徴収票などを確認します。ローマ字氏名と在留カード上の氏名が異なる場合は、本人確認書類と社内データの表記を照合しておくと後工程がスムーズです。
12月〜翌年1月:計算、還付・徴収、源泉徴収票の交付
回収した情報を給与計算へ反映し、年税額との差額を還付または追加徴収します。源泉徴収票の交付、給与支払報告書や法定調書に関する事務も続きます。
年末調整の計算が終わった後に国外扶養の書類が届くケースもあります。会社で再計算できる期限や手続きは状況により異なるため、遅れて提出された書類をどう扱うか、税理士とあらかじめ運用を決めておくと安心です。
会社が回収する主な申告書と証明書
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
主たる勤務先へ提出する基本的な申告書です。本人、源泉控除対象配偶者、控除対象扶養親族などの情報を記載します。年の途中で家族構成や住所が変わった場合は、異動内容も反映します。
海外に家族がいる社員では、親族の氏名、続柄、生年月日、住所が現地書類と整合しているかを確認します。アルファベット表記の揺れがあると、同一人物か判断しにくくなります。
基礎控除・配偶者控除等に関する申告書
本人や配偶者の所得見積額などを記載します。制度改正により様式や判定基準が変わることがあるため、前年のPDFをそのまま再利用せず、対象年分の国税庁様式を使ってください。
保険料控除申告書と控除証明書
生命保険料、地震保険料、一定の社会保険料などについて申告します。海外の保険商品が日本の控除対象になるかは、名称だけで判断できません。対象性が不明な場合は、保険会社、税務署または税理士へ確認します。
前職の源泉徴収票
年の途中で転職した社員は、前職分を合算して年末調整するため、前職の源泉徴収票が必要になることがあります。前職が海外企業のみだった場合や、国内源泉所得の扱いが複雑な場合は、給与担当者だけで結論を出さない方が安全です。
国外居住親族を扶養控除に入れる場合
親族関係書類を確認する
国外に住む親族について扶養控除等を受ける場合、一般に親族関係書類の提出または提示が必要です。外国政府や地方公共団体が発行した出生証明書、婚姻証明書、戸籍に相当する書類などが候補になります。
書類が外国語で作成されている場合は、日本語訳も必要です。翻訳者の資格が一律に指定されているわけではありませんが、原文のどの部分に対応する訳かが分かり、氏名・生年月日・続柄を正確に確認できる状態にします。
送金関係書類を親族ごとにそろえる
生活費や教育費として送金した事実を示すため、金融機関の送金明細、クレジットカード利用明細などの送金関係書類が必要になります。複数の親族を扶養として申告するなら、誰への送金かを親族ごとに判別できるよう整理してください。
手渡しの現金や、親族Aの口座へ家族全員分をまとめて送った記録だけでは、親族B・Cへの送金を十分に説明できない場合があります。社員へ案内するときは、「家族へ送金した証拠」ではなく「申告する親族ごとの送金記録」と伝える方が誤解を減らせます。
30歳以上70歳未満の親族には追加条件がある
国外居住親族が30歳以上70歳未満の場合、留学により国内に住所・居所を有しなくなった人、障害者、またはその年に生活費・教育費として一定額以上の支払を受けている人など、対象となる条件が追加されています。一定額の送金要件を使う場合、年間の合計額と送金先を確認できる資料が重要です。
年齢や送金額だけを見て判断せず、対象年分の要件を確認してください。制度や必要書類は改正される可能性があります。
外国人社員の年末調整で起きやすいミス
「外国人は全員非居住者」と扱う
在留資格や国籍と、所得税法上の居住区分は別の概念です。外国籍でも居住者に該当する人は多く、日本国籍でも生活拠点によっては非居住者となる場合があります。
国外の家族全員をまとめて扶養にする
親族関係、年齢、所得、送金状況などを一人ずつ確認する必要があります。「母国の家族へ毎月送金している」という説明だけで一括処理しないようにします。
翻訳のない外国語書類を受け取ったままにする
担当者が内容を確認できないまま保存すると、氏名や続柄の不一致に気づけません。原文と訳文をひも付け、どの申告項目の根拠書類か分かるファイル名にしておくと確認しやすくなります。
税務と在留資格の確認を混同する
年末調整は税務手続きです。一方、転職、職務内容の変更、雇用契約の更新、在留期間の更新は入管手続きに関係することがあります。年末調整が完了しても、在留資格上の手続きが済んだことにはなりません。
給与・年末調整ソフトを選ぶポイント
社員数が増えると、紙と表計算だけでの管理は負担が大きくなります。給与ソフトを比較するときは、料金だけでなく、年末調整申告のオンライン回収、多言語で補足しやすい設計、給与計算との連携、権限管理、法改正への更新方針を確認しましょう。
また、外国人社員の海外書類は形式が統一されていません。ソフトを導入すれば親族関係や控除可否を自動で判断してくれる、というわけではありません。証憑を回収し、人が確認する工程は残ります。
マネーフォワード クラウドが合いやすい会社
給与、勤怠、社会保険、会計などをクラウドで連携し、バックオフィス全体を段階的に整えたい会社に向いています。複数サービスを一つの運用へ寄せたい場合は比較候補になります。
一方、社員数が少なく、現在の給与計算が安定している会社では、必要以上の機能が運用負担になることもあります。利用する機能、初期設定、既存データの移行範囲を先に決めてから検討してください。
弥生が合いやすい会社
会計や給与の基本業務を分かりやすく始めたい小規模事業者、既に弥生シリーズを利用している会社では、導入候補にしやすいサービスです。操作性やサポート範囲を確認し、自社の担当者が継続して使えるかを試しましょう。
ただし、複雑な人事制度、細かな承認フロー、多数の外部システム連携が必要な会社は、要件を整理したうえで他の選択肢も含めて比較する方がよい場合があります。
※料金、無料体験、対象機能、成果条件は変更される場合があります。申込み前に公式サイトで最新情報をご確認ください。
会社で使える年末調整チェックリスト
□ 当年の入社者、退職者、帰国予定者を整理した
□ 居住者・非居住者の判定に必要な事実関係を確認した
□ 国外居住親族を申告する社員を早めに把握した
□ 対象年分の申告書を配布した
□ 親族関係書類と日本語訳を確認した
□ 申告する親族ごとの送金関係書類を確認した
□ 前職の源泉徴収票を回収した
□ 税務判断を税理士・税務署へ確認する基準を決めた
□ 在留期限、職務内容、転職に伴う入管手続きを別途確認した
□ 個人番号や家族情報を閲覧できる担当者を限定した
在留資格の手続きは行政書士へご相談ください
外国人社員の年末調整そのものは税務の領域です。税額計算や控除可否について個別判断が必要な場合は、税務署または税理士へご相談ください。
一方、外国人社員の採用、転職、職務内容の変更、在留期間更新、就労資格証明書などは、在留資格の確認が必要になることがあります。ミツノブ行政書士事務所では、雇用予定の職務と在留資格の整理、在留資格変更・更新に関するご相談を承っています。税務と入管手続きを分けて整理したい事業主の方も、お気軽にお問い合わせください。
よくある質問
Q.外国人社員も日本人社員と同じ年末調整をしますか?
A.居住者に該当し、年末調整の対象要件を満たす場合は、基本的な流れは日本人社員と共通です。ただし、国外居住親族の扶養控除や外国語書類など、追加確認が必要になることがあります。
Q.在留カードがあれば居住者と判断できますか?
A.在留カードは重要な確認資料ですが、それだけで所得税法上の居住区分が決まるとは限りません。住所、居所、滞在期間、生活の本拠などを踏まえて確認します。
Q.海外の家族へ現金を手渡しした場合も扶養控除を受けられますか?
A.送金関係書類として何が認められるかが問題になります。手渡しだけでは客観的な記録が不足する可能性があるため、対象年分の国税庁資料を確認し、必要に応じて税務署または税理士へ相談してください。
Q.外国語の親族証明書は会社が翻訳してもよいですか?
A.日本語訳が必要です。翻訳方法や記載内容に不安がある場合は、原文との対応が明確な訳文を準備し、税務署へ確認するとよいでしょう。
Q.年末調整ソフトを導入すれば国外扶養の判定も自動化できますか?
A.入力や計算、申告書回収の負担を軽くできる場合はありますが、親族関係書類や送金資料の内容確認、例外的な税務判断まで自動化できるとは限りません。ソフトと専門家への確認を役割分担して運用します。
参考情報
執筆・監修 ミツノブ行政書士事務所 行政書士・宅地建物取引士 松田充正
本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の税額、扶養控除、在留資格・雇用手続きの結果を保証するものではありません。税務判断は税務署または税理士へご確認ください。



